現地レポート

播磨国の古代駅路 ①湖底に沈んだ幻の駅路と邑智(おおち)駅

姫路市太市中(おおいちなか)の通称「桜ダム」の湖底には、古代山陽道が眠っています。

昭和初期にダムが作られるまでは、山間の湿地帯でした。

明治時代の旧版地図によれば、駅路はここを築堤して横断していたと推測されます。図の右端です。

大市駅推定地
大市駅推定地
兵庫県立考古博物館NEWSvol.14

播磨国全体の推定ルートで見ると、大市駅(『延喜式』ではこちらの表記)と草上駅の間ということになります。

播磨国古代官道と駅家

播磨国古代官道と駅家
岸本道昭 2015年「播磨国諸駅家と関連遺跡群」『古代交通研究会第18回大会資料』

水中はさすがに無理ですが(笑)、かつての峠の手前まで、痕跡を辿ってみました。

まずは、俯瞰で地形をご覧ください。

桜山貯水池

現道は姫路科学館(通称:アトムの館)から、尾根を切り通してダム湖をぐるりと巡っています。

一方で、旧道は科学館の裏手から、桜峠を越えていました。1m単位の等高線とともに詳細な地形をご覧ください。

桜峠アップ

道路痕跡は峠の手前で突然途切れます。ダムの建造時に、峠を埋める工事が行われたのでしょうか? 実際に現地を歩いてみましょう。

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綺麗な凹道地形が残っていますね!。久しぶりの凹道探索でドキドキです。

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境界杭が旧道の位置を教えてくれます。この先にも続いています。

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しだいに勾配がきつくなります。振り返ってみると、旧道の中央は浸食を受けて沢のような姿になっています。

そして、ついに、桜峠で堤に突き当りました。

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よく見ると、コンクリート片や金属片が混ざっていて、ダム工事の残土を積み上げたようです。

堤の脇をよじ登ると、ダム湖が眼前に広がりました。古代駅路はここから峠を下っていたはずです。

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ダム湖の反対側にも、明瞭な駅路痕跡が残っています。

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田んぼの中を直進するこの道の見事さよ! この先の丘陵下には、かつての駅路敷地が空き地として残っています。

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ほぼまっすぐ進むと、邑智駅の比定地にたどり着きます。

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案内板が立てられているほかは、なんの痕跡はも残っていませんが、以前、レポートした通り、周辺の発掘調査により駅家跡と確実視されています。

つづく

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