現地レポート

常陸国の古代駅路 ⑧小美玉市羽鳥の謎の切り通し状地形

石岡駅から水戸方面へ約4km進んだ「開拓踏切」の東に、謎の切り通し状地形があります。案内板では、「推定約1200年前に構築された古代官道(駅路)の残存遺跡の一部である」としています。まずは写真をご覧下さい。

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なんでこれが謎なの?、とご不審と思います。実は、定説的な想定ルート(※資料編ご参照)はこの西隣を通過しており、駅路痕跡らしい浅く広いホリワリが存在するのです。どっちが本物?!(笑)

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まずは、ファクトをおさらいしてみましょう。お馴染み、明治期初めの迅速測図では、ほぼ想定ルート(青線)に沿った道だけが見えます。緑線は切り通し状地形。

開拓踏切_明治初期迅速測図
出典:歴史的農業環境閲覧システム(農研機構農業環境変動研究センター)

ところが、明治36年(1903年)測量図で見ると、どうやら切り通し状地形も道として使われていたようです。常磐線を敷設する際に道の付け替えがあったのかも。

開拓踏切_明治36年測量地図

さらに、昭和15年(1940年)修正版では、切り通し状地形の方の道だけが描かれています。

開拓踏切_昭和15年修正地図

1946年の米軍空撮写真では、現道と同じ場所に道筋が見えますが、切り通し状地形の方は不明瞭です。

USA-M84-A-6-124_19460325_小美玉市
USA-M84-A-6-124_19460325_小美玉市

最後に立体地形図をご覧下さい。複雑な起伏が見えます。

謎の切り通し状地形_羽鳥

なお、現地探索では、五万堀古道で出会った他所の切り通し状痕跡と比べ、違和感を持ちました。特に、平らな底面が河原近くで大きく広がっている一方、頂上付近では徒歩道レベルまで狭まっているのが気になります。

以上の通り、謎は深まるばかりです。なにかご存知の方、いらっしゃいませんか?


◎参考資料

現地案内板より

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木下氏による想定ルート。Aは国府、Kは安侯駅想定値、Eが開拓踏切。(木下良 2013年『日本古代道路の復元的研究』

五万堀地名の残る場所_木下良_2013年『日本古代道路の復元的研究』
五万堀地名の残る場所_木下良_2013年『日本古代道路の復元的研究』

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